においと認知症
7月17日の北陸中日新聞に「においが記憶を呼び起こす」記事が掲載されていました。
においの情報は、鼻から脳の嗅球と呼ばれる場所に運ばれ、その後、嗅内皮質などに伝達されます。嗅内皮質は、記憶と関連する海馬と神経線維で結ばれています。アルツハイマー型認知症の病理病変は、嗅内皮質に最も早期に出現します。
アルツハイマー型認知症の方では、高い頻度で嗅覚低下を認めます。嗅覚には、何のにおいかを嗅ぎ分ける識別能と、においに気づく検知能があります。アルツハイマー型認知症では識別能が最初に障害されます。レビー小体型認知症では、嗅覚低下の頻度がアルツハイマー型認知症よりも高く、概して早期から高度な嗅覚低下がみられます。嗅覚低下は、特徴的症状としてレビー小体型認知症の新しい診断基準(2017年改定)に新たに組み入れられました。
嗅覚障害はMCI(軽度認知障害)の段階から認められ、認知症の初期症状となることがあります。MCIで嗅覚低下がある場合、認知症に将来移行する確率が2倍以上高くなります。普段意識することが少ない嗅覚ですが、嗅覚低下は認知症の早期兆候となる可能性があります。